がとう
朱雀紋瓦当・白虎紋瓦当
直径16.0㎝、18.0㎝
新代
屋根を葺く軒丸瓦の先端につく「瓦当(がとう)」は、前漢時代には「文字瓦当」が多く用いられましたが、新代につくられたこの2点は内区全面に側視形の禽獣を配しています。構図は戦国時代の秦の瓦当に共通しますが、周縁に厚みがあり、中心に大きな乳(にゅう)を設ける点に漢代の様式があらわれています。
朱雀・白虎は首下や尾羽、後脚などに天上の生物の象徴である雲気をまとい、円形の限られたスペースに肢体を納めつつも脚や羽、尾に見事な動きがあります。しかし、体躯内部に刻まれた硬直した紋様線など、後世の直しも認められ、とくに朱雀の首から上は欠失した部分を埋めた痕があります。
前漢末から新の頃の四神紋様の出現には、陰陽五行説の流行が関係しています。自然界のあらゆる事象を「陰」「陽」の二気、そして木・火・土・金・水の五元素で説明する理論で、色(青・赤・黄・白・黒)や方角(東・南・中央・西・北)にもあてられました。朱雀は五行の火(赤)にあたり南方を守護、白虎は金(白)にあたり西方を守護します。
前漢末期に外戚として権勢をふるった王莽は、元始四年(4)から礼制改革に着手し、やがて帝位につくと、天子の祀る九廟をつくりあげました。西安の西郊ではその跡地である礼制建築遺跡が発掘され、王莽の曾祖父・元城孺王王賀の親廟にあたる3号建築では、東西南北の方角に対応する門に四神紋を施す瓦当が用いられていたことが明らかとなりました。
当研究所の瓦当もその一部を構成していたのでしょう。
(石谷)