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        ことじ

弓矢形石製品・琴柱形石製品(伝奈良県天理市布留出土)


鏃長9.7・9.3㎝ 弣長4.3㎝
古墳時代前期(3世紀中頃~4世紀) 重要文化財

弓矢形石製品は、弓の端で弦を固定する弭(ゆはず)、弓を握る部分の弣(ゆづか)、矢が飛ぶときに音を出す鳴鏑(なりかぶら)、矢を弦に固定する矢筈(やはず)、矢先で突き刺さる部分の鏃(ぞく)のセットです。

琴柱(ことじ)形石製品は、琴の弦を支える琴柱に似ているためにそう呼ばれていますが、実際には仗の先端であるとか、枕元に突き立てたといわれ、確かな用途はわかっていません。下部に小さな穴があるため、少なくとも何かに差し込んで使ったと考えられます。

これらは全て碧玉(へきぎょく)と呼ばれる青みがかった石材で作られています。碧玉製品は古墳時代前期にお墓へおさめられることが多く、弓矢形石製品も祭祀用と考えられます。

弭と弣は弓なりに反っており、裏側には装飾がないので、本来は弓の正面を飾ったのでしょう。本体が木で作られていたとすると、土中で失われた可能性があります。

鏃を除く弓矢形石製品は2つの遺跡からの出土例しか知られておらず、うち1例は巨大な墳丘と卓越した副葬品を備え大王墓と目される奈良県桜井茶臼山古墳です。当研究所の蔵品も桜井市の北の天理市出土と伝わり、近くの大きな古墳におさめられていたのでしょうか。

3世紀の日本について記した「魏志倭人伝」に、「木弓は下を短くし、上を長くす」という一節があり、こうした特徴は弥生時代に描かれた弓とも一致するといわれています。現代の弓道でも弓の中央より下の位置を握り、1700年以上経っても変わらない射法に悠久の歴史を感じます。
(馬渕)
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