ときんうんきもんしゅそん
鍍金雲気紋酒樽(伝河南省洛陽出土)
通高21.4㎝、口径18.3㎝
前漢後期~新代
筒形の胴体に鋪首と呼ばれる吊金具と三本足のつく蓋のある器を酒樽(しゅそん)あるいは温酒樽と言います。
宋代の「考古図」や「博古図」では「奩(れん)」と呼ばれており、漆製や陶製の同じ形をした器は今でも奩と呼びます。
胴体の鋪首は獣の頭部、三足は熊に象り、蓋の中央と周りには鶏の形をした鈕(つまみ)がついています。
これらの鈕は蓋を裏返して置くための「蓋脚」で、中央の飾りは本来不要ですが、王莽の新の時代以降には装飾として付けられることがあります。
ただし、本器中央の鈕は他と質感が異なるため、後の時代に付け足されたものでしょう。
酒樽はお酒を温めたり、醸造したりする器ですが、宴会の席でも用いられたようで、鍍金や彩色が施されて華やかです。
鍍金は金と水銀を混ぜたアマルガムを塗布し、加熱させて水銀だけを蒸発させる技法です。
これによって雲気が表現されており、よく見るとその輪郭には「蹴彫り」という彫金技術で破線もつけられています。
雲気が象徴するのは神仙世界であり、器全体が様々な動物たちの暮らす仙山を象っているようです。
蓋の裏側には赤や緑の彩色で鳳凰が描かれます。中国古代には、天の使いである鳳凰が郡鳥を従えて降りてきたとき、吉祥がもたらされると信じられていました。
漢代の人々は、このような器を用いて宴席を楽しみ、吉事を祝ったのでしょうか。
(石谷)