本文へ移動
第80回展観 
−金属に刻まれた絵画芸術−

会 期 | 1997年10月25日(土)~11月9日(日)

展覧会概要

 日本の金工技術の粋を集めた刀装具の内、鐔は最も大きく目立つ存在です。そこに描かれた意匠・文様は、平面的な絵画を越えた、立体的な金属の絵画とも呼べる性格をも示しています。本来はカタナを握る拳を守るための道具であった鐔が、時代の流れの中でこのような芸術の域にまで到達した歴史は、日本の金工史の一つの縮図とも申せましょう。当研究所には、著名な肥後鐔の収集をはじめ、300点を越えるつばのコレクションがあります。この中には、土屋安親の名作「豊干禅師図鐔」(重要文化財)をはじめ、人口に膾炙(かいしゃ)した名品も含まれております。今次の展観におきましたは、研究所蔵品を中心に古墳時代に倒卵形鐔から明治時代の加納夏雄系の鐔まで、鐔の歴史を巡李、形態・材質・技法・文様など多様な側面から、各時代の趣向や美意識の変遷・発展を概観できる展示を試みました。
 刀や刀装具が実用から離れてからも、刀装具の製作は金工美術品の一分野としたその伝統が脈々と受け継がれています。大阪在住の阪井俊政(政市)氏は鐔・小道具の深淵な世界を蘇らせる現代金工の第一人者です。高彫象嵌を主として、独自の技法・素材を織り交ぜた秀麗な作風を示されます。一方、九州の長嶺雅臣氏は林派を中心とする肥後鐔の復興に取り組んでおられます。伝統的な意匠の墨守に終わらず、現代に通じるオリジナルの意匠を巧みに取り入れ、風雅な透鐔を製作されます。お二人の素晴らしい作品に本展観の掉尾を飾らせて頂きましたことに、深く感謝する次第です。
 なお、末尾ながら、本展観の開催にあたり貴重なご所蔵品をご出品頂きました関係者の方々に、厚く御礼申し上げます。

TOPへ戻る