鬼面文鬼瓦
現高43.1㎝
奈良時代(7世紀後半~8世紀前半)
鬼瓦は棟端にある装飾的な瓦の総称で、正面にほどこす文様は飛鳥時代には軒丸瓦と同じ蓮華文が一般的でしたが、やがて獣面文、鬼面文へと変化しました。外から来る邪悪なものを退ける「辟邪」の役割を期待されたと考えられます。
本品にあらわされた顔は、目を見開いて見下ろし、眉尻を吊り上げます。さらに口角を上げて、歯をむき出し、鋭い犬歯を見せます。これらは角の生えた鬼よりも、むしろ憤怒の形相をあらわした金剛力士などの神像と共通しています。
鼻、目、眉、頬を突出させるなど、鬼面全体を大きく盛り上げ、非常に立体的な作りとしています。平城京や平安京から出土する鬼瓦は板状のものが多く、これほどの立体感は備えていません。
鼻や頬の根元にはうっすらと亀裂が見え、割れた部分には粘土が層状に積み重なっているように見えます。したがって、先に、鬼瓦を作る型の鼻や頬に粘土を詰め込み、その上に何回かに分けて粘土を積み上げ成形したことがわかります。
本品は大宰府出土といわれ、類例が大宰府跡や怡土城跡などから出土していますが、周縁に連珠紋をめぐらせるなどの違いもあります。これらは平城宮の鬼瓦よりも古いとされ、統一新羅の影響を受けた最古の鬼瓦と考えられています。
(馬渕)