太刀 銘 備前国長船住景光 □□元年□月日
刃長77.6㎝ 重854g
鎌倉時代(14世紀) 重要文化財
身幅が広く、反りがやや深めの太刀で、手取りは少し重く感じます。
よくつんだ小板目の地肌には地沸がこまやかについて、ぼんやりと白く“乱映り”が立っています。
“小丁子(こちょうじ)”に“小互の目”、“片落ち互の目”が交じった華やかな刃文は、おたまじゃくしのような“蛙子(かわずこ)丁子”や刃文から離れた“飛焼(とびやき)”がまじり、“小足”がよく入っています。
匂(におい)がやや深く、ところどころに小沸がついて、水平方向に砂地をほうきで掃いたような“砂流(すながし)”の模様がみえます。
佩表側には柄を密教法具の三鈷杵にかたどった剣の刀身彫刻があります。
不動明王を象徴する持物であり、その加護を願ったことがわかります。
後世に刀身を短く切り詰める磨上げを行ったため、現状は三鈷柄の部分が鎺(はばき)と柄に隠れ、剣の部分のみが見えています。
備前長船の刀工・景光の作で、茎裏には年紀も刻まれますが判読不明です。
鎌倉中期の光忠を祖とする長船派は、中世を通じて数多くの名匠を輩出し、備前鍛冶の主流となった刀工集団です。
景光は光忠、長光に次ぐ三代目の頭領と目される名工で、嘉元四年(1306)から建武元年(1334)の年紀を有する作品が現存することからおよその活動時期がわかります。
本刀の鎺には三葉葵紋があしらわれることから、ある時期には徳川家の所有であったとみられます。
(川見)