本文へ移動
よこやそうみん  ほていずこづか
横谷宗珉 布袋図小柄

銘 宗珉(花押)

9.7×1.4×0.7㎝

江戸時代中期


赤銅魚々子地(※1)の小柄で、中央に口を結わえた金の袋を大きく配し、その奥に四分一(※2)の杖を横たえます。
一方、裏面は四分一と金を対角線で貼り合わせた削継(そげつぎ)とします。
 
袋と杖は中国唐末の伝説的な僧・布袋を象徴する持ち物で、画題の主人公ではなくそれを連想させる物のみの「留守文様」となっています。
布袋は名を契此といい、通常は大きな袋と杖を持った太鼓腹の姿で描かれます。
弥勒菩薩の化身ともされ、禅宗を中心に信仰を集めました。
日本では七福神の一柱としても広く親しまれています。
 
作者の横谷宗珉(1670?~1733)は幕府御用彫物師・後藤家に学んだ宗与の孫とも子とも伝えられ、その跡を継いで扶持にあずかりました。
やがて理由あってこれを辞すと、親友であった画家・英一蝶の下絵を用いた「絵風鈒金(えふうけぼり)」を創意して一家をなしました。
 
本作は文様を浮彫りとした「高彫」の作品ですが、周囲の小縁をなくした「棒小柄」とすることで図柄を大きくあらわしています。
また、袋の結び目にみられるように、極度に立体性を強調することで、文様を力強くみせています。
 
後藤家の伝統と格式を受け継ぎながらもそれに満足せず、新たな様式を生み出したことにより、宗珉は江戸における町彫の祖と位置づけられました。
(川見)
 
※1 赤銅(しゃくどう)は銅に数%の金を混ぜた合金で、特殊な溶液で煮る「煮色仕上げ」により紫黒色となる。烏金(うきん)ともいう。魚々子地(ななこぢ)は魚卵状の粒文様を打ち並べたもので、刀装具では伝統的で最も多い下地である。
※2 銅に銀四分の一を混ぜた合金。
【関連論文】

TOPへ戻る