銅鈴(伝千葉県木更津市稲荷森古墳出土)
全長12.0cm、9.2cm
古墳時代後期(6世紀)
青銅で作られた球形の鈴2点で、片方は全長10cmを超える大型品です。これほど大きな鈴は珍しいため、早くからその存在が知られ、古代の馬具や楽器をテーマにした図録や書籍に何度も掲載されてきました。
明治時代、千葉県木更津市にある稲荷森古墳から出土したと伝わっていますが、その経緯や遺跡の詳細はほとんど分かっていません。
大きな鈴は突線と突帯で十字に区画し、区画内に円紋、蕨手紋、珠紋をほどこしています。球形の上に、吊り下げるための把手(鈕)が逆U字形についています。内部には金属製の玉を入れています。小さな鈴は珠紋を充填した円紋を配し、周りにも珠紋を置きます。上に方形の鈕がつき、中に丸みのある小石を入れています。
2点とも、鈕の反対側の鈴口が厚く盛り上がり、青銅を流し込んだ湯口の痕跡と考えられます。しかし、この痕跡は古墳時代の鈴にあまり見られず、本来は研摩などで削りとったか、そもそも湯口の位置が異なっていたと考えられます。
当研究所は、ほかにも三重県泊村田ノ山から出土したと伝わる銅鈴を収蔵しています。こちらは全長15.0cm、重さ841gで、本品は全長12.0cm、重さ797gになります。大きさが違うわりに、重さはあまり変わりません。素材や厚みの違いを反映しているのでしょう。
よく知られる資料だからこそ手放しにせず、製作技術をふまえたさらなる研究が必要です。
(馬渕)