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   さぶろうすけ
岡田三郎助「古き昔を偲びて」

166.7×71.2㎝
大正15年(1926) キャンバス 岩絵の具

髪を頭頂で二つに結い上げ、唐風の衣装に身をつつんだ天平美人が、左手に小さな白い花をつまんでたたずみます。
衣装をみると、大袖の上衣「衫」に「裙」(巻きスカート)を胸まで引き上げて着ています。

肩にかけた白い披帛(ショール)が二の腕まで下がり、つま先が上に反り返った青い靴が裾からわずかにのぞいています。
「襦裙」とよばれる唐代女性の一般的な服装で、壁画墓に描かれた美人図や埋納された女俑を彷彿させます。

作者の岡田三郎助(1869~1939)は黒田清輝にまなび、白馬会創立メンバーのひとりとして知られます。

この作品は第7回帝国美術院展覧会(帝展)のために大正15年(1926)、58歳の時に制作したもので、水彩用のキャンバスに、群青や鉛白など日本画の色材を用いて描いており、背景には銀泥の上から金泥を重ね、悠久の歴史を感じさせる重厚な仕上がりとします。

当研究所は三郎助の絶筆「編物」も所蔵しており、数少ない近代絵画の収蔵品のなかに、貴重な遺作2点が含まれていることになります。

(川見)

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